PHS終了とモバイルの世界

2021年1月末のワイモバイルPHSの一般ユーザー向けサービスの終了まで1か月ほどとなった。1998年にDDIポケット東京(当時は地域によって分社化されていた)に契約して070-5で始まる番号をもらった。その後Pメールデラックスのメールサービスが始まり、pdx.ne.jpドメインのメールアドレスももらった。この電話番号とメールアドレスは2014年末から4Gスマートフォンに引き継いで使用している。なお、その際にそれまで使っていたPHS端末に別の電話番号を付与して子回線として契約しているため、PHSの契約自体は今も続いている。(ワイモバイルではPHSを子回線にするのは無料で、ウィルコム末期に実施していたやぶれかぶれ企画の「もう1台無料キャンペーン」の名残である。)このPHSの電源を久しぶりに入れ、1月末のPHS終了を見届けたいと思う。寝てる間に機能を停止されそうな気もするけど、2月以降順次という可能性もある。最後は端末は白ロムになるのではなく灰ロム(電波状態を見ることはできる)で終わってほしいところ。(地域によってはテレメタリング端末向けに電波は続くので。)

この辺の経緯は6年ほど前に書いたのでそちらも参照いただきたい。

DDIポケット〜ウィルコムの思い出 - hito’s blog

ところで長年DDIポケットウィルコム→ワイモバイルとややマイナーな通信キャリアを20年以上にわたり契約してきたことで、そういう「4番手」の通信キャリアの特徴というか宿命というかが見えてきたところがある。それは今の楽天モバイルにも共通点が見えるのである。

  1. 2500~3000円の範囲の月額
  2. 料金体系はシンプル
  3. ユーザーは200~500万人の範囲
  4. 業界4番手
  5. あまりたいしたことない技術的特徴をすごいことのように繰り返し吹聴
  6. 基地局整備が思うように進まない
  7. 画期的な料金プランを出しても他社に追従される

共通点はざっと思いつく限りところこんなところか。

1はウィルコム定額プラン楽天Unlimitの価格はほぼ同じ。その価格で得られるサービスは後者のほうが良いけど、そこは時代が違うので補正して考える。とはいえ企業としては一定の客単価は必要でやはり3000円を少し切るくらいのところに限界があるようだ。ウィルコムはその後基本料はその半額近くのプランを出したが、オプションをいろいろつけさせて実質的には3000円前後になるようになっていた。

2はあまり選択肢が多すぎると客も選びにくく店員も何をお勧めするのかに困り、店頭のオペレーションコストもかかる。大手以外のキャリアは単純なプランになりがち。

3はDDIポケットの末期のどん底期に300万を切ったくらい。その後ウィルコム全盛期に400万超えたくらい。だれとでも定額が売れていた時期には500万超えも一瞬達成していたと思う。楽天は300万人になるまで無料とやっているがまだ達成できていないようなので今は200万人台と思われる。MVNOの旧プランからの巻き取りが進んで今後増えても500万超えは厳しいだろう。

4はドコモ、auソフトバンクの次のシェアということで、ウィルコムが4番手だったのはツーカーauに統合されることになってからだが、3番手との差は絶望的に大きかった。そもそも通信方式が違っていたわけだし。楽天は通信方式の違いのハンデはないものの、3番手より上に行くことは、まあないでしょうな。

5は、ウィルコムは一時期やたら「マイクロセル」を連呼していた。1つ1つは小さい基地局が10万以上設置され、それぞれのエリアが重なり合うことで混雑しにくく、スループットが良いということである。当時は3G携帯の初期で、3G陣営の基地局数も十分ではなかった。しかし3G陣営もどんどん基地局を増やし、4Gになっても緩めず、基地局の数はウィルコムPHSを上回った。「あまりたいしたことない技術的特徴」と言うのは厳しい言い方だし、当時聞けばカチンときただろうけど、時間とともに追い越される宿命の特徴であるのは確かだった。大手キャリアの資金力にものを言わせた攻勢には勝てないわけで。さて楽天は「完全仮想化ネットワーク」である。これにウィルコムが繰り返し言っていた「マイクロセル」と重なるものを感じるのである。(全然別のものであることはわかっている。念のため。)完全仮想化というものが良いものであるなら他のキャリアも取り入れるだろうし、逆に欠点があるのならなんでそれを採用したのかと言われる。どういうネットワーク構成にするのが最適なのかはその時の経営状態によっておのずと決まるわけで、その範囲で努力するのは当たり前のこと。それをすごいことのように吹聴していると「何かあるな」と思わざるを得ないのである。

6はウィルコムにおいてはXGPの整備が進まない時期に感じたこと。それと同じ匂いを昨年から今春にかけての楽天に感じたのである。いろいろ言い訳を並べ、基地局整備が進まず営業サービスが進まないことを正当化していた。楽天は当時のウィルコムよりは企業体力はあるので、遅れながらも進めていったが。

7はウィルコムにおいてはソフトバンクによるホワイトプランでの攻勢、そしてだれとでも定額実施後の携帯各社による通話定額プランの攻勢である。これで音声通話に強みのあったウィルコムは完全に詰んでしまった。楽天は日本の携帯は高すぎると参入したはいいが、他社が同額で対抗してきて詰んでしまった。価格だけが取り柄のキャリアは大手に対抗されるとそこでジエンド。

今年は政権の意向もあって携帯業界は大きく揺れ動いたけど、殴り合いになったら大手が強いというのは変わらない。結局大手の寡占化が進むだけではないかとの識者の意見には頷かざるを得ないのである。

(2/1追記)楽天は1GBまでなら無料というプランを出した。ウィルコムも晩年は基本料無料を乱発していたので共通項がまた増えた。(最初は2回線目以降のみだったが、やがては1回線目も何かとキャンペーンの理由をつけて無料案件を出していた。)